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Y.B.C.Documentary
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第1回
『創生と対立』
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前説
皆さんこんばんは。Y.B.C.解説委員のトーリャ・マトヴェイです。
世界の歴史とは一体なんでしょうか。
それを語るにおいて、この世界の創生の根本に目を向ける必要があります。
今現在、私たちの住むこの世界には、いまだ紛争やテロといったものが渦巻いています。
私たちは、いまここで過去の歴史を振り返る必要があるのではないでしょうか。
このY.B.C.Documentaryでは、全10回のシリーズとしてその歴史を振り返ってみようと思います。
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2003年の3月1日、世界の創生が行われました。
創世記に建国された国々の指導者は、自国の農業効率の上昇に躍起でした。
重工業が優先される時代ではなく、各国の経済格差はありませんでした。
そうした情勢下において、世界の覇権掌握というビジョンを持ちえた国は、大東亜共和国(現ユークトバニア)とガルバディア帝国だけでした。
大東亜共和国は独裁主義の軍事国家の建設を開発指針として定めており、また数による掌握を目指し、創生から翌日の3月2日には、世界ではじめての同盟組織である箱庭国家共同体(HNC-以下共同体)の創設に踏み切ります。
共同体は、大東亜共和国の影響下にあった二カ国との連合による三カ国体制をとることとしました。
大東亜共和国は、加盟二カ国に技術給与や物資給与をちらつかせることにより、完全な傀儡国家とすることに成功していました。
実質的に共同体の全権限は大東亜共和国が掌握していたのです。
旧大東亜共和国政府高官
「これは所謂速度戦でした。どれだけ早く国際的組織、それも軍事面に長けたものを創設するかが、今後の世界情勢を左右するだけの力をもてるものだと私たちは信じていたのです」
またこうした大東亜共和国の動きに即応する形で、咎罪共和国(現咎罪管理国)による平和機構の設立が行われます。
平和機構は共同体にくらべ対外的に威圧感のない、あくまで平和共存主義の印象を世界に与えていました。
ガルバディア帝国の建国は、大東亜共和国より遅かったものの、衛星国を当初より多数保有しており、即座に同盟の組織が可能でした。
ガルバディア帝国連邦の誕生です。
ガルバディア帝国連邦は、覇権に対する欲望を隠しませんでした。本国はもとより、衛星国、とりわけ、天使の集う国の対外宣伝活動は非常に過激な内容を含んでいました。
数の優位性を脅かされた共同体は、徐々に帝国連邦との対決姿勢を整えつつ、平和機構の取り込みを企図するようになりました。
平和機構との連帯を帝国連邦に示すことによって、軍事的干渉が不可能であるとの印象を与えようとしたのです。
天使の集う国の対外宣伝活動は、帝国連邦賛美に止まらず、ついに共同体と平和機構、とくに帝国との関係が悪化している共同体に対する直接的批判へと移ったことも、この共同体の連帯行動に拍車をかける結果となったのです。
共同体は再三にわたり天使の集う国の共同体批判を停止するよう帝国連邦の長、ガルバディア帝国本国に申し入れました。
本国ならびに帝国連邦は、この共同体の要請に応える姿勢をみせました。
元天使の集う国在住・当時主婦
「毎日が目に見えない恐怖につつまれていました。何故私たちの国は他国に喧嘩をうろうとするのだろう。自分たちの生活に危害が及ばないかが心配でしたが、これは天皇陛下のためであるという政府見解をきくことしかできなかったんです。ですから、本国が過激な宣伝活動の抑制に同意したときは、胸をなでおろしましたよ」
しかし、帝国連邦の対応とは裏腹に、天使の集う国は共同体批判を継続していました。
その後、数度にわたる共同体の批判停止要請にも従う姿勢をみせることはなかったのです。
元大東亜共和国外務省職員
「外務省は天使の集う国や、その背後にある帝国連邦との関係に神経を尖らせていました。しかし政府や国防部はそうではなかったようで、この事態をうまく利用しようと考えていました。「私たちは、天使の集う国に対する軍事力の投入の大義名分を手に入れたのだ」と、私の国防部に務めていた知人は言っていました。いまとなっては、狂気としかいいようがないでしょうね。しかし当時の状況というものはそういうものだったのです」
4月16日、共同体の軍隊が天使の集う国に対して空爆を開始しました。
歴史上初めての軍事衝突がおこるものと予想されましたが、天使の集う国はこれに反撃を加えようとしませんでした。
天使の集う国の政府は、対外的に自らの正当性を訴え、その証拠に軍事的抵抗を行わないと宣言したためです。
共同体は空爆を継続していましたが、帝国連邦は軍事力の行使を批判することはあっても、軍事的な手を出そうとすることはありませんでした。
元ガルバディア帝国政府関係者
「天使の集う国は、私たちからみても厄介な存在でした。本来ならば防衛する義務もあったでしょうが、天使の集う国が本国や、帝国連邦の批判抑制命令に従わなかったことで、共同体の要請に応えたことに嘘をついた形をとらされたわけですから、堂々と天使の集う国を軍隊を派遣してまで防衛することはできなかったんです。共同体のこの時の行動によって、彼らが我々と軍事対決も辞さないのだと悟りました」
空爆開始から数日で天使の集う国はその国家機構を完全に破壊されました。
帝国連邦の介入も受けず、共同体は帝国連邦の国力を削ぐことに成功したのです。
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Y.B.C.ドキュメンタリー
第1回
『創生と対立』
製作-Yuktobanian Broadcasting Corporation
解説-トーリャ・マトヴェイ
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Yuktobanian Broadcasting Corporation(Y.B.C.)は、
ユークトバニア連邦共和国に本社をもつ民間の国際報道誌です。
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