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Y.B.C.Documentary
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第3回
『第一次世界大戦』
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前説-Y.B.C.解説委員「トーリャ・マトヴェイ」
世界同盟間不可侵条約の締結により、世界には新たな平和の枠組みが生まれることとなりました。
それまで反目しあってきた共同体と帝国連邦に加え、平和機構の参画によって、全ての大国と同盟が海外派兵の術を放棄したのです。
しかしこうした条約も、共同体の軍備が整うまでガルバディアを拘束するという、軍事的野心によって生まれたものでありますし、またガルバディア自身もこの条約を自らの世界戦略に利用しようとしたわけであります。
Y.B.C.ドキュメンタリー第3回『第一次世界大戦』では、条約締結以後のこうした各国の思惑がどのような結果を生んでいったのかを見ていくことといたします。
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2003年5月5日、世界同盟間不可侵条約の締結のための調印式が大東亜共和国首都「覇都」で行われました。
三大同盟の代表として、共同体からは大東亜の首相、平和機構から咎罪の首相、ガルバディアから本国外務大臣が出席しました。
元・咎罪共和国 当時首相
「私をふくめ、各国代表とその関係者らも終始にこやかな表情をつくることに必死になっていたんじゃないですかね。調印が終わると勿論私たちは握手をかわさなくてはいけませんでしたが、いまから思えば、大東亜とガルバディアの握手に笑いをこらえていた者もいたのかもしれません。あの席上で、平和機構だけどこか外れていた気がしてなりません。あれはあくまで共同体とガルバディアにとって重要な条約だったんです」
調印式の後にひらかれた晩餐会で、主催国の大東亜共和国の首相は演説でこう述べました。
大東亜共和国の首相演説(記録フィルムより抜粋)
『(中略)・・・この条約の締結によって、永続的平和が齎されることを私は確信します。今後我々は手を取り合い、共に世界を導く大任を共有していくのです・・・(以下略)』
条約締結の後、ガルバディアの対外宣伝工作は一層強くなりました。
目を付けられたのは花鳥風月王国でした。
花鳥風月王国は当時、情報技術分野において最先端をいく技術立国として繁栄していましたが、総合的な国力はガルバディアに劣っていました。
ガルバディアは軍事力を背景に、花鳥風月王国に対して帝国連邦への参加するよう圧力をかけつづけましたが、最終的に花鳥風月王国の政府は、帝国連邦への参加を拒みました。
元・花鳥風月王国 政府首相「葵」
「すでに交渉というものではありませんでした。恫喝です。我が国は至極丁重にガルバディア側からくる特使にお引取りを願いましたが、何度か訪れた特使のほとんどは暴言をはくことが多かったように思います。帝国連邦に参加できる名誉を否定することにを知れ・・・などといっていました」
神聖ガルバディア帝国 元・陸軍兵士
「花鳥風月王国への軍事侵攻作戦を決行するであろうことは、それがはじまる数日前より私たちのような一般の兵士までもが知る公然の事実となっていました。花鳥風月王国が連邦加盟を渋っている様子が報じられていたそばから、軍には非常呼集が出ていたんです。帝国は最初から軍を派遣するきだったのです」
5月8日、ガルバディア帝国連邦軍が花鳥風月王国に電撃的に宣戦布告を行いました。世界同盟間不可侵条約締結のわずか三日後のことです。
この突然の出来事に共同体は混乱しました。
大東亜共和国 元・副首相
「5月8日の・・・たしか21時ごろでした。私はすでに帰宅していたのですが、そこに電話がかかってきました。それは首相から直々にかかってきたもので、すぐに官邸にもどれとただならぬ雰囲気でした。私たちはガルバディアが条約をここまで大っぴらに破るとは想定していなかったのですから、対応決定までひどく荒れましたね」
大東亜共和国は条約を違反したガルバディアに対して軍事的制裁が必要であると各国に主張しました。しかし、大東亜共和国自身が軍を派遣することについては即座に決定を下すことが出来ませんでした。
ガルバディアと戦闘を行うことは、世界同盟間不可侵条約の違反となるからです。大東亜共和国の政府は条約違反という国際的信用を失う行為だけは絶対に避けたいと考えていました。
大東亜共和国は、一時的に共同体から脱することによって、条約の適応外国家としてガルバディア攻撃を行おうともしましたが、最終的には平和機構との協議によって、「条約はガルバディアの無法行為によって無効となった」という声明を採択することによって解決しました。
ガルバディア帝國連邦は当時四カ国であり、その全てが戦争に参加していました。
一方、花鳥風月王国の独立を守り、ガルバディア帝国の露骨な侵略政策を打倒する目的で結成されることとなる連合軍には共同体から二カ国、平和機構から二カ国、その他の非同盟国家から二カ国が参加し、計六ヶ国によって組織されました。
非同盟国家の二カ国はラングール連合共和国とクリンゴン帝国でした。
クリンゴンは同じ帝国でも、「恥を知らぬ国ガルバディア」と主張しガルバディアと対立を深めていた国でした。
ラングールは中立国家でしたが、ガルバディアのあまりに秩序を無視した行動による世界的混乱を恐れ、軍事作戦への参加を決断しました。
帝国軍は、連合軍が組織されると花鳥風月王国への攻撃よりも連合軍への攻撃を優先する作戦をとりました。
これによって連合軍の主力であった大東亜共和国は甚大な被害を受けました。
しかし、陣営単位でみたときには被害程度の格差は広がっていました。ガルバディアが圧倒的に苦戦する形となったのです。
元ガルバディア本国市民・当時13歳 現在コンティス王国在住
「子供のころでしたが、あの時のことははっきりと覚えていますね。夜中でした。私たちは防空壕で寝るようになっていました。そして毎晩轟音ととてつもない振動が私たち家族を襲いました。それが収まって外にでると、前はそこからみえていた高層都市群が跡形無なくなっていて、ただ炎の光で黒煙が照らされるばかりの光景が広がっているんです。思い出すだけで嫌になりますね」
帝国軍は大東亜共和国への攻撃に全力をあげましたが、そのために他の連合国への攻撃が疎かになりがちでした。
ガルバディア本国では、戦況の悪化に伴い学徒出兵も相次ぎました。戦争の年は帝国大学をはじめとした国内の主力大学での受験も中止され、数万人の在学生が戦地に派遣されました。
学徒出兵のひとつをとっても、ガルバディアが連合軍に圧倒されているのはガルバディア国民の間でも常識となっていましたが、帝国のメディアは帝国軍の華々しい勝利を国内外にむけて宣伝していました。
当時の帝国新聞は、事実と異なる戦果報告を報道し続けていたのです。
元・帝国新聞編集部長(当時)
「私たちは独自も取材をすることも許されていませんでしたし、他国からの情報もはいってきません。ですから政府や党から連日おくられてくるFAXの内容をそのままコピーはしたものを掲載するしかありませんでした」
帝国の敗戦が決定的になった5月14日、世界を震撼させる出来事がおきました。
当時情報分野で最先端の技術を保有していた花鳥風月王国によって、ガルバディア帝国連邦の裏操作が発覚したのです。
裏操作とは、帝国本国が他の帝国連邦加盟国へパスを取得して侵入し、コマンド入力を行っているというものです。これはローカルルールに定められた重複禁止への抵触でした。
旧花鳥風月王国 元・政府高官
「私達はただちにこの事実を各国に伝えると共に、管理にも通報しました。世界が我が国のため・・というわけではないのでしょうが、我が国への帝国の侵攻を食い止めてくれたわけですから、我々も情報活動くらいは支援するのが道理でした」
ガルバディアの違反行動の発覚は世界に更なる混乱の渦にまきこみました。
特に被害の大きかった国の国民からは「何故そのような犯罪行為が執行されていた戦争で我々は被害をうけなければならなかったのか」という世論が増大していたのです。
元・現箱管理人メルキド
「私もラングールとして参戦していましたから、彼らの苦しさはよく理解できました。ですから、ルールに基づいて行われなかったこの戦争は、一度なかったことにしようじゃないか・・となったわけです」
これにより、管理によって戦争前の状態まで時間をまき戻すことが提案されました。
しかし、誰もがこの案を支持したわけではありませんでした。
特に反対したのは新興国家であった水火民主共和国(現・水夏連邦共和国)とラキニア共和国(グダニスク連邦共和国)です。
戦争に参加していなかった国にとって、時間のまき戻しはそれまでに築いた経済基盤の崩壊を意味していたからです。
水火民主共和国の主張演説(当時の記録フィルムより)
「この戦争によって被害をうけた国は数多くある。しかし全ては先進国のエゴでおきたことだ。そして、戦争中の期間にも我が国や、多くの国が多くの国の開発を行ってきたのだ。自分たちがおこした戦争を、自分たちに良くなる風にだけ修正するなどということは許されない。我々の経済的損失を考えたことがあるのか。自業自得である」
こうした途上国の主張に管理は耳を傾けませんでした。
そして5月15日、時間のまき戻し事業が決行されました。
しかしここで思わぬ不具合が発生し、突然世界を多くの天変地異が襲いました。
ある国は濁流にのまれ、完全に海の底に没したほどです。
現グダニスク連邦自由国 フェスシティ在住の老婦人
「最初は何が起こったのかまったく分かりませんでした。ただ軍人が早く避難船へ行けとまくし立てていたのです。国と共に軍属の夫が沈んだのを知ったのは今の国土にたどり着いてからでした」
こうして多くの国が世界から消失しました。
のちにこれがファーストインパクトと呼称される世界最大の消失事件として歴史に書き加えられることとなったのです。
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おわりに-Y.B.C.解説委員「トーリャ・マトヴェイ」
第一次世界大戦、世界の滅亡という最悪の形で終わりを告げました。
本編で水火の記録フィルムがありましたが、まさしくあそこに述べられている通り、先進国の身勝手な行動によって、関係のない途上国までもが大きな被害を被ることとなったわけです。
世界同盟間不可侵条約の締結も、帝国のルール違反も、時間のまき戻し事業も、全て世界的に大変な事件であると同時に、その決定は全て先進国の独善で行われてきたのです。
この戦争は、世界がどうあるべきなのかという我々人類にとっての強烈な反省点であるといえましょう。
しかし戦後、世界に平穏が訪れることはありませんでした。
次回のYBCドキュメンタリー第4回は、戦後復興に向かう世界に現れた、新たな脅威「ルソー」についてお送りいたします。
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Y.B.C.ドキュメンタリー
第3回
『第一次世界大戦』
製作-Yuktobanian Broadcasting Corporation
解説-トーリャ・マトヴェイ
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Yuktobanian Broadcasting Corporation(Y.B.C.)は、
ユークトバニア連邦共和国に本社をもつ民間の国際報道誌です。
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