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【1646】Y.B.C.Documentary 第5回 『そして滅びの旋律へ』
 ヴェルーサ社会主義共和国  - 06/6/27(火) 13:06 -

引用なし
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Y.B.C.Documentary
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 第5回
『そして滅びの旋律へ』

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 前説(Y.B.C.解説委員トーリャ・マトヴェイ)

 途上国で起きた不正送金事件に端を発したルソーに対する美多民国の武力行使は、ルソーが明らかな加害者であるにもかかわらず美多民国が自ら停戦を余儀なくされるという苦渋の結果となりました。
 そしてこれは途上国間の紛争に収まることは無く、大国を巻き込んだ一大武力紛争をも引き起こすことになったのです。

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 元美多民国GT国派遣軍 当時通信兵
 「私たち将兵は酷い屈辱感を覚えていました。なぜ敵の中枢を目の前にして撤退しなければならないのか当時の私たちにはまったく理解できなかったのです」


 美多民国軍がGT国より撤退したことにより、不正資金問題は再び外交の場での解決が図られることとなります。
 途上国間による話し合いでの解決が難しいと考えた北東人民共和国(現ヴェルーサ社会主義共和国)と水夏社会主義連邦共和国(現水夏連邦共和国)の二大社会主義国(双方ともMETO加盟国であった)は、グダニスク連邦自由国とアールヴヘイム神国の資本主義及び宗教国家も交えた公平な議場にルソーを召還し、問題解決のための要求を飲ませる計画(五カ国会談)を実行します。
 五カ国会談により、GT国はヘッケル王国への資金返還と施設解体を行う約束を再度確認されることとなりました。

 再度GT国に侵攻し、財産没収を行うべきとの論調も強く残っていましたが、これに反対する国もありました。
 それは後にルソー派と呼ばれる勢力(下記にて説明)と、おっとっと国(現ランゴバルト王国)でした。
 おっとっと国は、美多民国がGT国への攻撃を開始した当初より、美多民国によるGT国の被害は甚大であり、尚且ついまだ不正資金問題の追求を続けるのは卑怯であるとし、ヘッケル王国への資金返還は諸外国が資金を出し合って補い、さらにGT国が保有する不正資金は戦災復興にあてて然るべき、と主張していました。
 さらにおっとっと国は、こうした国際舞台での平和機構とMETOの肥大化を恐れてか、第三勢力の形成を目的として、非同盟の大国や中堅国を取り込むため密使を各国に派遣し、説得に奔走し、各国の加盟を取り付ける事に成功します。
 こうして10月12日、LPC(League of Peaceful Countries)が結成されます。
 LPCは国力のある加盟国を予め確保した状態で発足を公に宣言したため、大きな衝撃をあたえました。
 ミリタリーパワーの調節を指標としていたMETOにとっては、LPCは現実的な障害として出現した敵でした。

 ここでルソーは新興同盟LPCの軍事的抑止力に目をつけます。
 発足して間もないLPCは、もとより大国の参加があったとはいえ、加盟国の増加には歓迎姿勢でした。
 ルソーはこれを利用し、自国を含む自らの息のかかった途上国をLPCに加盟させたのです。
 ルソーの影響下にあった国、またはルソー本人による傀儡国(水夏によりルソー派と呼称されるようになる)がそれでした。
 LPCは合議制の同盟だったこともあり、このルソー派諸国の流入はLPC自体の活動をルソー派が支配できる可能性をも生み出しました。
 LPC加盟に各国は不信感を露にしていたものの、正面から阻止しようすることはしませんでした。また盟主であるおっとっと国もまったく不快感を示さず、ルソーを擁護する姿勢を堅持していました。

 同時期、ガルバディア帝国が戦時下における不正行為への謝罪を行ったことによって復興が認められました。
 METOは平和機構やLPCといった各組織を牽制するためにもガルバディア帝国連邦を戦前水準まで円滑に復興させるべきと考えていました。
 しかし、反ガルバディア的国々の圧力等によってガルバディアの復興が遅れる可能性があったことから、METOは復興するまでの間ガルバディアの安全保障を請け負うことを自ら提案し、ガルバディア側もこれを歓迎しました。

 元METO戦略防衛会議 書記官
 「当時の私たちにとってルソーとは「不正資金問題の加害国」でしかありませんでした。そのような途上国の加盟を阻止するためだけに大国と戦争をする必要性なんてまるでないのですから当然のことです。METOの当時の最優先課題はガルバディアの復興支援でした。歴史をしる今となってはいかようにも評価できてしまうことです。いまから考えれば、ルソーのLPC加盟を許したことよって、我々は、当時ただの途上国の国主だったルソーを武力で抑えつける術を失ってしまったのです」


 LPC加盟を承認されたことを契機にルソーの国際政治上の発言は、次第に国際感情を無視した横暴なものへと変わってゆきました。
 ヘッケル王国からの資金で開発された施設等の解体も、完了したのか不透明なままでした。

 10月21日、ヘッケル王国で大規模な怪獣災害が発生しました。
 これにすかさず反応をしめしたのはGT国国主ルソーでした。
 ルソーは国際会議場で以下のように発言しました。


 ルソーの発言(記録フィルムより)
 「今回ヘッケル王国は膨大な被害を受けています。この際各同盟から少しずつ復興援助を出してみませんか?大型施設の件ですが、GT国の失業率からいってこれらの施設の解体は深刻な失業問題を引き起こしかねません。そこでこれらの施設の建設費と同額をヘッケル王国への返済に変更することを申し出ます」


 ヘッケル王国の財政は安定しており、資金援助の必要性はない状態でした。
 GT国による施設解体は、GT国自身のケジメとして要求されていた事柄だったのです。
 この発言は明らかに施設解体を回避するための言い訳でした。
 またルソーは、ヘッケル王国の怪獣災害をいち早く察知していたにもかかわらず、怪獣に対しての攻撃支援を行おうとはしませんでした。これにより結果的にヘッケル王国の被害は拡大したのです。


 旧アールヴヘイム神国 政府関係者
 「ルソーはもとよりヘッケル王国を救済する気などありませんでした。本心としては潰れてほしいと考えていたのでしょう。自国の施設解体を渋り、さらにはヘッケル王国への支援を呼びかけながら、一番被害を食い止めることのできる環境にあってそれを行わなかったのですから」


 この一件で、国際社会のルソーに対する反発はより一層強くなっていきました。
 結局、GT国がヘッケル王国に資金を送金しおえたのは21日になってからのことでした。

 後に開催された第三回国際サミットは、ルソーと諸外国との関係悪化に一層の拍車をかけます。
 METOはサミット閉会後、ある程度の復興が完了したガルバディアの安全保障について、関係を発展させるとして共同軍事作戦も可能な軍事条約の締結に踏み切ります。
 LPCの肥大化によって軍事的に優勢でなくなったMETOは、ルソーを非難していく上でも十分な抑止力を欲しており、そのパートナーとしてガルバディアを選択したのです。
 これはヴェルリン条約とよばれる比較的大きな軍事同盟関係の樹立でした。

 11月1日、ルソー派諸国のLPC関連不祥事(同盟規約独断改正/国際会議不参加等)が相次ぐ中、合議制であったLPCは組織改変の一環として常任理事国制の導入を推進しました。
 これはLPC内の非ルソー派国家が、多数決制におけるルソー派の独占議決に危機感をおぼえて導入を決定したものでした。
 常任理事国を選定することで、ルソー派以外の国も同盟内で十分に意見を反映できるようにしようと考えたのです。

 11月9日、ルソー派国家への実務的な調査活動がはじまり、第一次世界大戦でもその情報解析能力が高く評価されていた花鳥風月王国に各国(METO、グダニスク等)が調査要請を行いました。
 花鳥風月王国はこれを快諾し、調査を開始します。
 その結果、LPC内に存在するGT国を含んだ五カ国がルソーによる独裁国家(つまり重複)であることが判明したのです。
 16日にはさらにもう一カ国が同様であることが確認されました。

 これによって国際的な反ルソー反LPC運動は頂点を迎えることとなります。
 はげしい糾弾が続き、ルソーの傀儡国家は放棄に追いやられ、LPCは自主的解散を行うことになりました。
 おっとっと国は、LPCの解散時の演説で、ルソー問題とLPCという組織自体は直接的に関係はないと最低限の弁明を行いましたが、責任転化はせずLPCの解体に踏み切ったことで、後に高く評価されることとなりました。

 情報調査は続いていましたが、ルソーの傀儡国やルソー派などの支持勢力が実際にどれだけ潜伏しているのか自体は明確に把握することは非常に困難なことでした。
 LPCが解散したことでルソー派国家は軍事的抑止力を失っていたため、METOを中心とした反ルソー陣営は強制捜査、つまり軍事力による疑惑国の完全統治による調査活動を現実的なものとして考えることが可能になっていました。
 ルソー派の疑いがあったのは旧LPC加盟国をふくめて六カ国にのぼり、これを同時に統治下におくことは大規模な軍の派遣が必要不可欠でした。
 ルソー派掃討作戦の実現のため、METOはグダニスクにも作戦への参加を求め、グダニスク政府はこれを快諾しました。これにより、METO(北東人民共和国/水夏社会主義連邦共和国/美多民国)及びグダニスク連邦自由国、そしてヴェルリン条約にのっとってガルバディアが別途に参戦し、ルソー掃討のための連合国軍は先進五カ国による大同盟となったのです。

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 おわりに(Y.B.C.解説委員トーリャ・マトヴェイ)

 旧METOの最大の功労は、今回放送のルソー派掃討作戦の組織と実行だといわれています。
 実際、METOは参加国を募っただけでなく周到な軍事作戦計画を立案し、戦略文書を各国に配布するなどして、作戦が円滑にすすむように取り計らいました。
 このルソー派掃討作戦がコードネーム「滅びの旋律」と名づけたのは、METOの提唱国であった北東人民共和国(現ヴェルーサ社会主義共和国)の元首であった最高司令官(本名不詳)であったと言われています。ルソー派の増殖は世界を滅びの道に歩ませるものであるが、それを打倒するために結成されたイデオロギーを超えた統合もまた、世界を滅びの方向に向かわせる旋律なのだという自らへの戒めをこめたものであるといいます。
 実際、北東人民共和国はこの統合がルソー派掃討に限ったものであることを望んでいました。
 それは、外部情報を国内で厳しく統制していた当時の北東政府が、連合が長く続くことによる現体制の崩壊による自由化を恐れていたためのものでした。
 今現在、世界にはイデオロギー上の枠をこえた国家連合であるプロスピアが存在していますが、当時の北東人民共和国が危惧していたとおり、咎罪やプロミストといった国家は結果としてグダニスク式民主主義体制の流入を防ぐことができませんでした。
 滅びの旋律作戦は、ルソー派掃討のための世界連合であったことと同時に、イデオロギーを無視した連合というものがいかように機能するのかという実験ケースだったともいえるのです。

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 Y.B.C.ドキュメンタリー
 第5回
『そして滅びの旋律へ』

 製作-Yuktobanian Broadcasting Corporation

 解説-トーリャ・マトヴェイ

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Yuktobanian Broadcasting Corporation(Y.B.C.)は、
ユークトバニア連邦共和国に本社をもつ民間の国際報道誌です。
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