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◆ユークトバニア中央党機関紙「探求」
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2006年10月5日号
◆セレーニア大統領 革命の首都シーニグラードを訪問
セレーニア連邦大統領であるアダム・セレーネが、革命の首都シーニグラードを訪問した。
我がユーク連邦に対決を挑み、世界平和を脅かしてきたセレーニアの最高指導者が、仇であろう我が連邦の首都に訪問するに至ったのは何故なのか。
今日の「探求」は、電撃的なセレーニア大統領訪問について特集する。
◆空港での歓迎式
シーニグラード国際空港に専用機で訪れた大統領は、迎えのアントーシャ・ミロン連邦外務大臣と握手を交わした。
セレーネ大統領は「今回の訪問で両国間の懸案事項が少しでも改善されるよう願っています」と発言し、ミロン外相も「人民もそれを望んでいる。社会主義連邦、そして全世界の人民が注視しているだろう」と返した。
大統領は、タラップから出迎えの車までの間に敷かれた赤の絨毯の上を、ミロン外相のエスコートで連邦赤軍観閲部隊を観閲しつつ歩いた。
その後、車は会談場所である革命記念堂に向かうため、市内へ向けて発進した。
◆市内 人民の声
シーニグラード市内を、護衛総局の警備車両を先頭に、大統領を運ぶ車列が進む。
革命記念堂までの経路は安全のため公開されていなかったが、噂を聞きつけた人民達は一様に歩道沿いから車列を見物した。
ユーク連邦旗を振る準備が良い人民も見られたが、セレーニア連邦旗は公での使用や所持が認められていないため振るものはいなかった。
ある人民は「今日は歴史的な日だ。私をはじめ全ての農民、労働者、インテリ達が大統領を歓迎している」とインタビューに答えた。
世論では無礼なセレーニアとこれ以上対話の余地はないとするものもあったが、この訪問に対する目だった反発は確認されず、概ね歓迎色であった。
◆カーメネフ書記長と歴史的会談
革命記念堂は、国家的な賓客を招く際に使用される迎賓館である。
かつて、オースチン共和国大統領と歴史的和解が交わされたのもここである。
記念堂に到着した大統領は、応接室でカーメネフ書記長の到着を待った。
大統領が到着した十分後に到着したカーメネフ書記長は、大統領と対面する前、側近に「世界が注視している。これほどの責任が伴う仕事は就任後はじめてだ」ともらしたという。
書記長が大統領の待つ部屋に入ると、大統領は椅子から立ち上がり書記長に握手を求め片手を差し出し、書記長はこれに両手でこたえ、大統領もそれに倣って片手をそえ、両者はがっちりとした握手を交わした。書記長は「ようこそユークトバニアへ。人民を代表して歓迎します」と発言し、大統領は「連邦市民を代表して貴国の暖かい歓迎に心から感謝します」として、両者とも両国人民の代表として立ってること強調した。
着席した両者は、通訳を通じて会談を行った。
以下はその会談の席でのやり取りを抜粋したものである。
大統領「この会談が両国の関係正常化の第一歩となる事を期待している」
書記長「セレーニアと共産主義国との溝が深まっていることは非常に残念であり、お互いのためにならない。今回、大統領閣下が我が方を訪問するという決断を下すまでには苦労があったと思うが、歴史は貴方の英断を必ず評価するでしょう」
大統領「我が国がこれまで採ってきた道は決して友好的とは言えなかったが今後は両国の友情を深めていければよいと思っている」
書記長「その点において我々が合意することは非常に意義深いことだ。そのためには我が方も最大限の努力を行うだろう」
会談では、実質的な両国間の諸問題についてはまったく言及されず、平和意思の確認が主要であった。
◆大統領 連邦評議会で演説
会談の後、セレーネ大統領は連邦評議会に出席した。
連邦評議会は本来、ユーク連邦における国会の役割を果たす最高意思決定機関であるが、大統領はこの場で演説する機会を得ていた。
これは異例の処置であり、大統領訪問での両国関係の進展にユークが大きな期待感を寄せていることが窺い知れる。
百数十名の代議士の見守る中、カーメネフ書記長とセレーネ大統領両者は並んで演台に立ち、まず書記長が演説した。
カーメネフ書記長
「我が連邦は今日まで、マクロネシア問題にはじまるセレーニア及びラタトスクの軍事圧力政策に真っ向から反対し、世界の安定に寄与するべく努力してきた。しかし、こうした努力は片方の力だけで実るわけではない。我が連邦の掲げる自主・平等・親善の外交理念は、相手もそれを尊重してはじめて機能するわけであり、これを認めない相手との対決は避けられず、結果、国際の安定は脅かされてしまう。しかし、そうした暗雲にも今日光が差すことになるであろう。セレーニア連邦大統領閣下が、今こうして私の隣で、評議会の演壇に立っていることはその象徴である。私はこう宣言したい。今後、ユークトバニア連邦はセレーニア連邦との関係改善のため、これまで以上の努力を行い、世界人民の幸福のための事業を促進させる意思を確固たるものにする。対立の時代に終わりを告げるその日まで、我々は前進する」
カーメネフ書記長が演説を終えると代議士からは溢れんばかりの拍手が飛び、その拍手は続けて演説するセレーネ大統領に向けられた。
セレーネ大統領
「マクロネシアについては不幸な行き違いがあったが平和と民主主義を求める考えに違いは無くこれまでの不幸な対立は避けられたし避けられるべきであった。私の誤った判断が国際情勢の緊張をもたらした事をここに謝罪したい。またこれまでの関係悪化にもかかわらず暖かく私の訪問を受け入れたユークトバニア政府に対し連邦を代表して感謝の意を示したい。この態度を見て彼らが我々に対し敵意を抱いているなどと誰が思えるだろうか。今後、セレーニアとユークトバニアの間だけでなく世界的な対立や不幸を解消していくためにもセレーニアとユークは手を取り合って前進していかなければならない」
大統領のこの演説に、場内はまた大きな拍手に包まれた。
◆実務者協議の開催で合意
今回の大統領訪問で両国で合意されたのは関係改善への努力という、半ばはっきりしないものだけではない。そのための合意事項もすでに決定された。
特には、今後継続して諸所の懸案事項について、両国の担当者が会合する実務者協議の開催がある。
外交上、これまで発生した問題については実務者協議で和解点を模索する。
さらに、共同国際事業の第一歩として、内戦が続く旭国への共同対処が決定した。
旭については、先日我がユークが陣営を問わずに武装勢力を鎮圧、平和維持にあたると声明していたが、この基本方針はそのままに、UFSが旭における治安維持活動に参画していくことになる。
場合によっては、両国の軍隊が共同作戦をとることになり、安全保障における交流の側面が生まれることだろう。
また、これにともなって、先日可決された赤衛特定事態法(特事法)の適用緩和が実施されることとなる。
また、セレーニアが国交断絶を一方的に通告したと同時に行われた、在セレーニアRpact諸国民の財産凍結が解除される。
両国の関係が急速に改善に向かうと見られる中、課題も多い。
我々は、セレーニアが我々に対する今回の英断と同様に、Rpact諸国とも個別に関係改善のための交渉を行ってほしいと熱望しており、我々との単体での国交回復だけでは大きな意味をなさない。
これら各国との交渉の過程で、いざこざが生じれば、それはユークとの交渉にも影響を与える。
赤衛特定事態法にしても、撤廃の目処は現時点でたっておらず、適用しない場合はあくまで特例処置という形式である。
◆帰国の途へ
演説終了後、書記長と大統領は演説で述べられた関係改善のための諸理念を示した共同声明に調印した。
大統領の都合上、通例の晩餐会は行われず、そのまま国際空港で専用機に乗り込みグダニスクにむけ飛び立った。
空港までは、行きと同様にミロン外相が付き添い、最後まで見送った。
こうして、歴史的な一日は幕を閉じたが、両国の関係改善にむけた歩みはいまはじまったばかりである。
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